追悼 小池賢博さん
米田耕司
2021年6月16日に小池賢博さんが83歳で逝去されたとの訃報を連盟事務局のお知らせで知り大変驚きました。私は昨年まで単身赴任で長く関東を離れていたこともあってだんだん疎遠になりました。1937年東京生まれの小池さんとは、千葉県立美術館で小池さんの定年退職まで8年間、副館長と学芸課長として一緒に仕事をした縁もあり、連盟の会員名簿が届く度にどうされているかは気にかかっていました。
小池さんは1962年に東京大学文学部美術史科を卒業後、同大学院に進学し、その2年後の1964年大学院を中退し、国立近代美術館に勤めました。初対面は、1974年開館の千葉県立美術館の特別展のため近美の作品借用に行った時のことです。小池さんが貸し出し担当で、調書の取り方について厳格な指導を受けたことを思い出します。小池さんは近美を1980年に退職し、山種美術館学芸部次長に転身し、近代日本画の専門館で仕事をされていました。その後1988年に千葉県立美術館副館長として着任されました。背広にスニーカーで、背中にリュックサック姿で通勤や働いていた小池さんの日常の仕事のスタイルが目に浮かびます。昼休みなど副館長室でイヤフォンを着けてNHKラジオのイタリア語会話講座を熱心に勉強していた姿を思い出します。1997年60歳で定年退職されました。数年後に小池さんとばったり出会ったとき「今、式年遷宮記念美術館で展覧会など、なんでも一人でやっていて大変だ」と語るのを聞いたのが最後の会話でした。
主な編著としては、『日本の名画8 菱田春草』(1977年)、『現代日本美人画全集第11巻名作 3洋画編」(1979年)、『花鳥画の世界9. 伝統と近代装飾 明治・大正・昭和の花鳥』(1982年)、『現代日本絵巻全集4 下村観山・菱田春草』(1982年)、『日本画素描大観7 奥村土牛』(1983年)、『20世紀日本の美術 アート・ギャラリー・ジャパン9高山辰雄/山本丘人』(1987年)、『野生司香雪仏画の世界』(1987年)、『美しい日本 風景画全集 4東海/甲斐』(1988年)、『巨匠の日本画 菱田春草 こころの秋』(1994年)などです。
小池さんの悲報に接し、共に仕事をした在りし日のお姿を偲び、心からご冥福をお祈りいたします。