美術評論家連盟は、芸術表現、批評活動の自律的営為を尊び、その何ものによっても遮られない持続を願い、たがいに支え合うことを基本理念とする。連盟は、芸術表現、批評活動の自律的営為にたいする、この自律的規範を無視した外部の力による、強制的かつ恣意的な改変(要請を含む)をはじめとする理不尽な抑圧にたいして反対し、かつ抵抗する。
そもそも、表現の発表はすべての表現者の権利である。芸術表現、および批評活動は、その成果を相互の議論に開くために発表される(表現の評価はその発表によって、はじめて議論に開かれうる)ものであって、こうした応答を通して、不断にその活動の質は高められ、品位が維持されなければならない。
芸術表現は、それが発表された際の恣意的な見解の差異、および偏向した解釈を根拠に、いたずらに抑制されるべきではない。まして、いまだ明らかにされてはいない解釈への怖れ、未然の配慮、抑止的な予防を理由に、前もって抑制されることは、決してあってはならない。
芸術および批評活動は、以上のような前提のもとに長年に亘り蓄積されてきた議論の歴史の上に形成されてきた自律的な判断と、その基準を備えている。連盟の活動はこの所産の上に成り立っており、この自律性を保ち、支えることを第一の目的とする。
*美術評論家連盟会員は、この表現、批評活動の自律性を維持するために不断の努力を惜しまず、それを自らの責務とする。
*国際美術評論家連盟の設立目的には以下のように記されている。
to defend impartially freedom of expression and thought and oppose arbitrary censorship.
「表現、思想の自由を分け隔てなく守り、それを恣意的に侵害する検閲に反対すること
https://aicainternational.news/aica
また、AICA の合衆国支部のサイトには、
One of AICA's founding principles was a statement against censorship「国際美術評論家連盟の設立理念のひとつは検閲への対抗にあった」と明記されている。
http://www.aicausa.org/about/aica-international
補
1 もし表現が、特定された個人の生活を脅かす、威嚇や強迫、中傷を含むものであれば、当然、その表現は表現として批判されなければならない。なぜならそれは議論へと開かれた表現ではなく、排他的な意思の強制(反証が可能でない断定)とみなされるべきものだからである。
2 芸術表現および批評活動は、その創作過程のあらゆる局面において、自律性を保つ権利(それを保つための自己吟味、修正、改変過程を行う権利)をもつ。この自律した論理に従った内的な過程と、それに対する外部からの権力の介入(法の恣意的な援用による検閲、地位や利害関係の非対称的な社会関係を背景にした強制など)による制作物の不条理な改竄、修正、抑圧、抹消は厳密に区別されなければならない。われわれは、こうした外的な強制力による創作過程への恣意的な介入(検閲、改竄)を決して認めず、この自律的活動の権利を一貫して守る。