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2020年11月14日 公開

一人同人誌

千葉成夫

 

 ここではフットワークの衰えばかり嘆いてきているが、「新型コロナ」騒動で外出しないことを余儀なくされていた最中の5月2日、軽いが(3度目の)ギックリ腰に見舞われ、ますます家に籠る他なく、ますます机に向うしかなかった。その甲斐あって2年近くご無沙汰の拙誌『俳諧巷』第18号の執筆と編集が捗り2020年10月に刊行。知らない人の為に言うと、これはよくある同人雑誌の類で、違うのは僕自身の文章しか載せない点だ。2002年創刊。不定期刊だが今度18号なので今のところ「年刊」。雑誌というか、年に一冊出す薄い単行本、になるかな。
 巻頭書下ろしは題して「絵画は空間を描く」、近代絵画終焉期の真っ最中の現在、絵画の最後の(そして実は「真の」?)主題とは、眼に見えない「空間」そのものを描くことである、というものだ。勿論、具象(現実再現)絵画だって、本性上絵画とは、当人が無意識ないし無自覚でも、空間「も」表現しようとする。だが今、画家はもっと自覚的である他はないだろう。
 事は彫刻・立体表現にも言えそうだ。物・形・出来事しか考えていない彫刻は、結局その三者の内側で、内閉して終りかねない(というか、そういうのはもう終っているわけだが)。でもそれだって、「そこに何も無い」広がり、つまり「空間」なしには存在も生起も不可能。美術にとって実はどちらが「主人公」か?
 そんな終りのない問いかけ、答もないかもしれない問いかけの中にのめり込んでいる。「コロナ」の渦中で、出来たら遠くをも望見したいと無理な背伸びをしながら、だ。「ヴァーチャルな表現」というものを、心的な意味でも終に信じられない、去り行く世代として生れ合せたからね。ロートル批評家は、本当は齢相応に、個々の「トピック」に反応しながら「ああだ、こうだ」云って大人しくお茶を濁していればいいのだろうけどねえ。

 

『美術評論家連盟会報』21号