2019年は、ドイツの革新的造形学校、バウハウス開校100年の記念年であり、本国ドイツのみでなく世界各地でこれを祝うイベントが行われている。日本は、20世紀モダニズムの源流の一つとして、創設された早い時期から評論家が紹介し、多くの芸術家や文筆家たちがその活動に関心を寄せてきた。また、日本はアジア圏で唯一、バウハウス学生(4人)を送り出した国でありバウハウスとの深い関わりを持ってきた。日本のモダニズム受容と造形教育に計り知れない影響を及ぼしたバウハウスについて、わが国でも、関連する展覧会やレクチャー、ワークショップなどで100周年を祝うべく、2017年に有志とともに「バウハウス100周年委員会」を立ち上げた。その事業の柱の一つは、「バウハウスとは何か?」という問いに正面から取り組んだ巡回展「きたれ、バウハウス」であり、筆者は、その監修に関わってきた。約2年の準備期間を経て、去る8月3日に新潟市美術館で開幕。その後、西宮市大谷記念美術館、高松市美術館、静岡県立美術館を経て、2020年の夏に東京ステーションギャラリーへと巡回する。デジタルテクノロジーの浸透が新たなフェーズを迎えている現在、バウハウスの創設者、グロピウスが1923年に提示した命題「アートとテクノロジー その新たな統一」は、技術の質の違いを超えて我々に再考を迫っている。というのは、その命題をいかに実現するかの方法論についてバウハウスの歴史は生きた素材を我々に提供しているからである。バウハウスはけして歴史上の金字塔に留まるのではなく、現代が直面している諸問題に切り込み、解決するための洞察を得るためのテクストとして今も生きている。例えば、来たるシンギュラリティーにどのように向かい合うか、といった喫緊の課題に対しても。「きたれ、バウハウス」展は、そのための格好のテクストになるはずだ。バウハウス100周年委員会の活動「bauhaus 100 japan」に関しては下記のサイトをご覧いただけたら幸いである。
http://www.bauhaus.ac/bauhaus100/