編集後記

2018年11月09日 公開

 2018年に美術評論家連盟は、「第41回 東京五美術大学連合卒業・修了制作展」における表現の自由の問題に対する質問状、そして旧中野刑務所正門の保存検討に対する意見書の2件の声明を提出しました。高階秀爾会員にご寄稿いただいた宇佐美圭司作品廃棄処分問題を含め、それこそクリティカルな、美術評論に携わる連盟として即座に反応せねばならない社会的緊急問題の発生は近年ますます増加傾向にあります。本会報発行の直後に開催するシンポジウム「事物の権利、作品の生」もまた、同じ危機感を共有しています。本会報が、南條史生新会長の挨拶にある評論の可視化、発信力強化の一助となることを期待しています。
 本号より会報は、文字数の自由度と閲覧性を高めるために、従来の冊子版から踏襲していたフレームを撤廃し、PDFからhtmlに形式を改めることとしました。合わせて誌名を「美術評論家連盟会報(英語題名:AICA Japan Newsletter)」として統一し、これまでの冊子版/ウェブ版の分類を取りやめて通号とします。またこれを機に、冊子形式で有料販売していた第1号から11号までのバックナンバー(2001~2010年度発行分)をWEBサイト上で無料公開いたします。あらためて旧号の頁を繰ると、発行開始直後から会員間の丁々発止の討論が収録されており、批評にかける先輩方の思いに触れるようです。今号も一部に連盟内の批判を含む文章が収録されていますが、個人攻撃に留まらない、批評言説の発展に寄与する提議を求める次第です。公開したバックナンバーと合わせて、当会報を広くご高覧、ご活用いただければ幸いです。
 最後に、本号に貴重な時間を割いてご寄稿いただいた執筆会員諸氏に深く御礼申し上げます。同様に編集委員、および編集補佐として尽力していただいた事務局の山内舞子さんに、あらためて感謝いたします。

美術評論家連盟
2018年度会報編集委員長
成相肇