美術評論家連盟は1945年5月、国際評論家連盟の日本支部として土方定一を会長として設立されました。本年は、美術評論家連盟が設立されてから50周年にあたります。
日本の美術評論はこの50年、日本の美術とともに歩んできました。美術評論家連盟ではこの機会に日本の美術批評の歴史を検証するとともに、20世紀美術を批評し20世紀を顧みる礎とすべく、シンポジウムを開催することといたしました。
基調報告では1950年代に活動を開始した針生一郎会長が戦後の歴史に言及し、美術批評とは何かを語ります。
パネルディスカッション第一部では1970年前後からの日本美術について、歴史的検証を含めた徹底討論が展開される予定です。
第二部では、作家や美術批評研究者、そして新しい世代を加えて、1990年代以降の日本の美術を、世界や未来という視点を含めて語ります。
美術批評がこれからの世界でどのような役割を担うべきか、美術批評に何が可能なのか、50周年を機会に討論し提案することが美術評論家連盟の責務と考えます。多くの方々のご参加をお待ちしています。
シンポジウム概要
主催 美術評論家連盟
日時 2004年11月20日(土)午後1時~5時30分(開場12時30分)
会場 東京国立近代美術館 地下1階講堂
〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園3
交通 地下鉄東西線竹橋駅下車徒歩5分
入場料 先着100名 入場無料
プログラム
総合司会:草薙奈津子(美術評論家連盟常任委員長)
1 午後1時ー1時30分
基調講演 「戦後の美術批評を振り返る」 針生一郎(美術評論家連盟会長)
2 シンポジウム「日本美術を批評する」
第1部 午後1時30分~3時30分
テーマ:1968年~1980年代「もの派から冷戦終結まで」
パネラー:針生一郎、中原佑介、峯村敏明
司会:千葉成夫
第2部 午後3時45分~5時30分
テーマ:1990年代以降:「現在そして未来」
パネラー:針生一郎、中原佑介、峯村敏明
コメンテーター:南嶌宏(熊本市現代美術館長)、椹木野衣(多摩美術大学助教授)、
岡崎乾二郎(アーティスト)、光田由里(松濤美術館学芸員)
司会:千葉成夫
50周年記念事業委員会
清水敏男(幹事)/谷新/南條史生/水沢勉
お問い合わせ先:
美術評論家連盟事務局 小林季記子
〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園3 東京国立近代美術館内
電話&FAX 03-3626-7528
メール: aica.jp@dream.com
出演者紹介
針生一郎 (はりう いちろう)
1925年宮城県生まれ。
文芸・美術評論家
現在、金津創作の森館長
【主な活動】
1965年 日ソ文学シンポジウムにて基調報告
1968年 ヴェネチアビエンナーレ日本コミッショナー
1977年・79年 サンパウロビエンナーレ日本コミッショナー
1981年・83年 アジア・アフリカラテンアメリカ文化会議にて基調報告
1995年 日中美術シンポジウムにて基調会議
など多くの国際展、国際会議の企画、組織に携わる。また和光大学人文学部で教鞭をとる。
最近は映画『日本心中針生一郎・日本を丸ごと抱え込んでしまった男』で注目される。
中原佑介 (なかはら ゆうすけ)
1931年兵庫県生まれ。
美術評論家
【主な活動】
1970年 第10回東京ビエンナーレ「人間と物質」企画
1973年・75年 サンパウロビエンナーレ日本コミッショナー
1976年・78年 ヴェネチアビエンナーレ日本コミッショナー
など数多くの展覧会、国際展に携わる。京都精華大学で教鞭をとる。
『世界美術全集』『世界彫刻美術全集』などの著書や訳書も多数。
峯村敏明 (みねむら としあき)
1936年長野県生まれ。
美術評論家、多摩美術大学教授
【主な活動】
1970年 第10回東京ビエンナーレ組織担当
1973・75・77年 パリ青年ビエンナーレ国際審査員、運営委員
1976~81年 テレビ朝日美術番組「アート・レポート」企画構成
1977・81年 サンパウロビエンナーレ国際審査員、運営委員
1986年 「モノ派展」企画
1987年 「もの派とポストもの派の展開展」企画
1993年 「かたまり彫刻とは何か展」企画
1994・97年 インドトリエンナーレ日本コミッショナー
1996年 「1953年ライトアップ展」企画
など、数多くの展覧会企画や国際展に携わる。主な著作に『もの派』『平行芸術展の80年代』。
千葉成夫 (ちば しげお)
1946年生まれ。
1972~74年 パリ大学付属美術考古学研究所に学ぶ。
東京国立近代美術館主任研究員を経て、現在中部大学国際関係学部人文・社会教室教授
【主な活動】
1985年 ドイツ、カッセル・ドクメンタ展日本地域アドバイザー
1984~93年 牛窓国際芸術祭コミッショナー
1989年 日本・斉藤義重展コミッショナー、ベルギー「ユーロパリア」展
1996年 90年代の韓国美術から展
1998~99年 日韓現代美術展コミッショナー
1999年 Global Conceptualism展コミッショナー
など数多くの展覧会や国際展に携わる。また『美術の現在地点』『奇蹟の器―デルフトのフェルメール』などの著書及び訳書など多数。
岡崎 乾二郎 (おかざき けんじろう)
1955年生まれ。
美術家、美術批評家、社会文化批評家。
1980年代初めからその個性的な作品によって注目され、国内外の数多くの展覧会に出品してきた。
1982年 第12回パリ・ビエンナーレ
1989年 ユーロパリア89現代日本美術展
1997年 第 9回インド・トリエンナーレ(ニューデリー)
また、絵画や彫刻だけでなく、建築、映画、コンピューター・アート、評論など、様々な分野にわたって活躍。
近作に『日回り舞台』(2000年)。著作に『ルネサンスー経験の条件』(筑摩書房)など多数。
椹木 野衣 (さわらぎ のい)
美術評論家。1962年、秩父市生まれ。
パンク、テクノなど70年代以降のサブカルチャーから多大な影響を受ける。1991年、当時の美術や音楽を「盗用芸術」の観点から論じた評論集『シミュレーショニズム』の刊行によって評論活動を始める。同時にレントゲン藝術研究所を拠点に村上隆、ヤノベケンジをはじめとする同世代のアーティストの発掘を精力的に行う。98年、『日本・現代・美術』を刊行、美術界内外から大きな反響を巻き起こす。他に『平坦な戦場でぼくらが生き延びること--岡崎京子論』『「爆心地」の芸術』『黒い太陽と赤いカニ--岡本太郎の日本』など著書多数。「日本ゼロ年」、「EXPOSE2002」展をはじめとする展覧会キュレーションも手掛ける。現在、多摩美術大学助教授。
光田由里 (みつだ ゆり)
1962年兵庫県生まれ。
美術館員。
京都大学文学部卒業後、1985年から富山県立近代美術館学芸課勤務、富山県立近代美術館事件を経験。
1989年から渋谷区立松涛美術館学芸員。1993年「美術と美術館のあいだを考える会」設立に参加。
2000年企画した「Counter Photography展」がモスクワから各地を巡回。
2002年バングラデッシュ・ビエンナーレ・コミッショナー、同シンポジウムに参加。
主な展覧会に「女性の肖像 日本現代美術の顔」(96)、「戦後美術を読みなおす 吉仲太造」(99)、「瀧口修造の造形的実験」(01)、「合田佐和子 影像」(03)などがある。
1991年から日本近代写真研究を始め、野島康三、中山岩太、福原信三らの展覧会を行う。
担当した「安井仲治 写真のすべて」展を11月21日まで開催中。
南嶌 宏 (みなみしま ひろし)
1957年長野県生まれ。
熊本市現代美術館館長、国際美術評論家連盟(AICA)理事。
筑波大学卒業後、インドを放浪。帰国後、いわき市立美術館、広島市現代美術館の開館準備に参画。
93年パリのカルティエ現代美術財団の奨学金でパリに留学。その後、岩手大学、女子美術大学の講師などを務め、5つ目の美術館の立ち上げとなる熊本市現代美術館館長。東ヨーロッパの現代美術館で組織する「ICAN」会員。
プラハ・ビエンナーレ2005キュレーター。
最近の展覧会企画に「反近代の逆襲-生人形と松本喜三郎」(2004)、「The Star-マリーナ・アブラモヴィッチ」 (2003)、「光の絵画-国立ハンセン病療養所菊池恵楓園絵画クラブ展」(2003)、「Open Sky-八谷和彦」(2003)、「熊本国際美術展-ATTITUDE2002」(2002)などがある。著書に評論集『豚と福音』ほかがある。